熱中症の予防だけでなく、高いパフォーマンスを発揮するためにも、脱水を防ぎ、水分補給をすることは大切です。
適切な水分補給をするためには、「脱水しているのか」「どれくらい汗をかいているのか」を把握する必要があります。
脱水と発汗量を把握する方法として簡単に導入しやすいのが体重測定です。
今回の記事では、体重測定で脱水と発汗量を把握する方法について解説します。
脱水とパフォーマンスの関係
脱水の度合いによって、パフォーマンスへ及ぼす影響は広がっていきます。
1%の脱水: 深部体温が0.3℃上昇+体温調節機能の低下
2%の脱水: 持久性運動能力の低下
3%の脱水: 瞬発系、パワー系能力、認知機能の低下
このように脱水はパフォーマンスにも影響を与えるため、熱中症予防とパフォーマンス発揮を目的に、スポーツ現場では練習や試合中には2%以内の脱水でおさまるのを目標に水分補給をしています。
忘れはいけないのは、運動を始めるときにしっかりと水分補給ができているという前提で2%以内という目標を掲げています。運動を始めるときにすでに脱水状態の場合には、熱中症やパフォーマンス低下のリスクが高まります。

暑熱環境下における競技パフォーマンスへの影響については、下記の記事で詳しく解説しています。
運動に伴う脱水率(%)を把握する
運動前後に体重を測定し、その体重の差を計算することによって、運動に伴う脱水率を把握することができます。
運動に伴う脱水率(%)=(運動前の体重ー運動後の体重)/ 運動前の体重 x 100
分かりやすく運動前の体重が100kg、運動後の体重が98kgで計算してみましょう。
上記の計算式に当てはめると、「(100-98)/100 x 100」という計算式になるため、このときのこの選手の運動に伴う脱水量は、2kg、脱水率は2%となります。
脱水率が2%未満の場合の対応
脱水率が、2%未満の場合には練習後に普段通りの水分補給をして、次の練習の際に体重が運動前の体重に戻るように水分補給します。
運動後の補食のことを考えると、運動後には体重減少分の1.2倍の補水と補食が推奨されています。
脱水率が2%以上から3%未満の場合の対応
一方、2%以上〜3%未満の場合には、「注意」が必要です。
熱中症は2%以上の脱水があると、発症すると言われているので、今回の場合には熱中症の症状が現れなかっただけで、このまま、水分補給を続けていると熱中症になる可能性が高くなります。
2%以内にするためには、どれくらいの量が足りなかったかを個別に対応して伝える必要があります。
運動後の水分補給は、2%以内の脱水のときと同じように体重減少分の1.2倍の補水と補食をするようにして下さい。また、部活動の練習が終わって自宅に帰るときに熱中症になってしまう可能性もあるため、帰宅する前にもう一度体重を測定し、しっかり水分補給できているかを確認することも大切です。
2%以上の脱水がある場合には、次の練習前の体重測定でしっかりと体重が戻っているかは指導者も含めて確認することも大切です。
脱水率が3%以上の場合の対応
脱水率が3%以上の場合には、「警戒」で、特に5%を超えた場合には「厳重警戒」になります。
脱水率が3%以上を超えた場合には、どのパフォーマンスにもマイナスの影響を及ぼしている可能性があるため、どれくらいの量が足りなかったかを伝えるだけでなく、「パフォーマンス低下の自覚があったのか」「いつもより疲労度が高くなっていないか」などを確認します。
また、脱水率が3%以上の場合には、塩分や糖分を効率よく早く吸収するために経口補水液を飲むように指示しています。
さらに、脱水率が2%以上〜3%未満のときと同じ対応に加えて、次回の運動中にはどのように水分補給をしているのかを観察するようにしています。必要であれば、運動中に水分補給をするように指示することも必要です。
脱水率が5%を超えた場合には「厳重警戒」としていますが、脱水率を5%を超えてしまうと、いつ労作性熱射病を発症してもおかしくありません。
1時間あたりの発汗量(mL/h)を把握する
運動前後に体重を測定し、その体重の差を計算し、運動中の引水量を足してから運動時間数で割ることによって、運動中の1時間あたりの発汗量把握することができます。
1時間あたりの発汗量(mL/h)={(運動前の体重 – 運動後の体重) + 飲水量} / 運動時間
分かりやすく2時間の運動において、運動前の体重が100kg、運動後の体重が98kg、ペットボトル2本(1000ml)の飲水で計算してみましょう。
上記の計算式に当てはめると、「{(100-98) + 1} / 2」という計算式になるため、このときのこの選手の1時間あたりの発汗量は、1500mL/hとなります。
計算した発汗量を目安に、次回の運動前や運動中の水分補給をするようにしてください。また、暑熱順化すると発汗量が増えるため、同じ環境条件(気温、湿度、風など)で同じ運動をした場合には水分補給の量を増やす必要があります。
