熱中症は主に症状によって熱失神、運動誘発性筋けいれん(熱痙攣)、熱疲労、熱射病の4つに分類されている総称の障害です。
これら4つの分類は別のメカニズムによって起こり、症状が出ているため、1つ1つ異なる救急対応・応急手当がスポーツ現場や職場などでは実施する必要があります。
今回の記事では、症状による熱中症の4つの分類について解説します。
熱失神: heat syncope
熱失神は、皮膚の血管が拡張し、下半身に血液が貯まることによって、脳への血流が低くなることが原因で起こります。
相対的に脳への血流量が少なくなることで、めまいや一過性の意識消失(失神)が起こります。
スポーツ現場では開会式など炎天下に長時間立っている場合や長時間動いて急に立ち止まったりした場合などに起こりやすいのが熱失神です。
対応としては、脳への血流を戻すことが必要になるので、涼しい場所に移動させ、衣服をなどを緩めて、足を心臓より高くすることが大切です。
汗をかくことによって血液量も低下しているので、可能であれば経口補水液などを飲ませましょう。

経口補水液については下記の記事で詳しく解説しています。
熱失神は比較的に、涼しい場所で足を心臓より高くするなどの応急手当で症状は緩和します。
運動誘発性筋けいれん(熱痙攣): heat cramp
運動誘発性筋けいれんは、大量の発汗によって塩分(ナトリウム)が失われている状態で、塩分や糖分を含まない水だけ、または塩分や糖分の濃度が低い飲み物を補給したのが原因で起こると考えられています。
大量の発汗と塩分の喪失という原因だけでなく、疲労や神経-筋の機能低下なども原因だと考えられていますが、現時点でのスポーツ科学ではまだ運動誘発性筋けいれんの原因は解明されていません。
運動誘発性筋けいれんが起こりやすい部位として、太ももの裏側やふくらはぎの筋肉で、これらの筋肉がけいれんや緊張して固まります。
経口補水液のような塩分や糖分が含まれている飲料を水分補給し、つっている部位の筋肉をストレッチしましょう。
運動誘発性筋けいれんは痛みを伴うため、ストレッチをしているときにアイシングをすることも効果的です。
熱疲労: heat exhaustion
熱疲労は脱水と血液の末梢循環不全が原因で起こり、めまいや脱力感、頭痛、全身倦怠感、吐き気、嘔吐などの症状があります。
スポーツ現場で最も起こりやすい熱中症が熱疲労と言われています。
深部体温をコントロールしようとする機能はまだ働いている状態ですが、しっかりと身体を冷却する応急手当が必要になります。
身体冷却に加えて、傷病者が水分補給することが可能であれば、経口補水液を飲ませるようにしてください。
身体冷却や経口補水液の補給などの応急手当を実施して、10分から15分で改善が見られない場合には、次に説明する労作性熱射病と同じように、緊急時と判断し、EAP(緊急時対応計画: エマージェンシーアクションプラン)を発動してください。
熱射病: heat stroke
熱射病は、熱疲労と異なり、深部体温をコントロールしようとする機能が働かなくなり、深部体温が40.5℃以上の高体温と中枢神経系の異常が起こるのが特徴です。

スポーツや仕事など身体を動かすことによって起こる労作性熱射病については下記の記事で詳しく解説しています。
中枢神経系の異常とは、見当識障害から昏睡まで様々ですが、暑さの中でいつもと違った言動をする場合には熱射病の中枢神経系の異常が起こっていると疑うことが大切です。
熱射病は、ヒトの体が深部体温をコントロールできない状態のため、外部から全身を冷やすことによって高くなっている深部体温を下げることが重要です。
深部体温が高くなった状態が続いてしまうと、多臓器障害の後遺症だけでなく、生命の危険が迫る緊急事態です。労作性熱射病の疑いがある場合には、緊急時と判断し、EAPを発動し、深部体温を全身を冷やすことによって下げる救急対応が求められます。
労作性熱射病の場合には、労作性熱射病を発症してから30分以内に深部体温を39℃以下にすることが、100%救命できると言われているため、アイスバス法など効率よく深部体温を下げる救護体制を事前に整えることが求められています。

アイスバス法のやり方について詳しく下記の記事で解説しています。
労作性熱射病の救急対応として国際的にゴールドスタンダードと言われている深部体温の測定とアイスバス法ではありますが、全てのスポーツ現場や職場でアイスバスを用意するのは困難です。アイスバス用のバスを用意できない場合には、TACOで代用できます。

代用となるTACOについて下記の記事で詳しく解説しています。
