日本救急医学会は、2024年7月に「熱中症診療ガイドライン2024」を公開しました。

熱中症診療ガイドライン2015では、熱中症の重症度は3つに分類されていましたが、今回のガイドラインでは4つに変更されました。

今回の記事では、新たに熱中症の重症度別の4つの分類について症状と対応を含めて解説します。

注意していただきたいのは、この熱中症の分類はあくまでも医師のための診療ガイドラインという点を留意してください。

熱中症の重症度I

熱中症の重症度Iに分類される特徴的な症状は、「意識障害を認めない」です。

重症度Iの症状
  • 意識障害を認めない
  • めまいや立ちくらみ
  • 生あくみ
  • 大量の発汗
  • 筋肉痛や筋肉の硬直、こむら返り など

重症度Iの場合には、通常は現場で対応可能で、徐々に改善していき、経過観察を行います。

ただし、重症度Iの症状が現場で対応しても改善が見られない場合には、重症度Iに分類されます。

熱中症の重症度II

熱中症の重症度IIに分類される特徴的な症状は、「意識聡明とは言えない」です。

重症度Iの症状が対応しても改善が見られない場合に加えて下記の重症度IIの症状が現れた場合には、全身冷却を開始し、救急搬送が必要になります。

重症度IIの症状
  • 意識聡明とは言えない
  • 判断力の低下
  • 集中力の低下
  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • 虚脱感

熱中症の重症度III

熱中症の重症度IIIは下記のいずれかの症状を含む場合に分類されます。

  • 中枢神経系の異常
  • 肝・腎機能の障害
  • 血液凝固異常

上記3つのいずれかの症状がある場合には、早急に全身冷却を開始し、救急搬送します。

熱中症の重症度IV

熱中症の重症度IVの症状は、深部体温が40℃以上かつ表面体温が40℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感がある)になります。

熱中症の重症度IVの症状がある場合には、重症度IIIと同様に、早急に全身冷却を開始し、救急搬送します。

深部体温の測定は、直腸温による測定が唯一の正確な測定方法です。日本では、病院外では医師しか直腸温を測定することができません。

重度な熱中症で命を落とさない・後遺症を残さないためのポイント

重症度IIIと重症度IVの重度な熱中症になってしまった場合には、最大のポイントが、「どれだけ素早く深部体温を下げることができるか」です。

重症度IIIとIVについては労作性熱射病に分類されているため、目安として

発症してから30分以内に深部体温を39℃以下にする

労作性熱射病について詳しく知りたい方は下記の記事を読んでみてください。

深部体温を測定しながら、30分以内に深部体温を39℃以下にすることができれば、救命率を100%まで上げることができ、後遺症が残る確率を最小限に抑えることができると報告されています。

救命率100%のアイスバス法について下記の記事で解説しています。

熱中症から命を守り、後遺症が残らないようにするためには、事前に全身の冷却方法を確保することが心肺停止から命を守るためのAEDと同じように重要です。

全身の冷却方法を確保することを含めて熱中症のための救護体制を整えましょう。

スポーツや職場など、事前に救護体制を整えるための中心となるのがEAP(緊急時対応計画: エマージェンシーアクションプラン)です。

労作性熱射病を発症してから30分以内に深部体温を39℃以下にするためには、労作性熱射病(重症度IIIもしくはIV)の疑いがあると早く認知し、深部体温を下げるための全身冷却する場所(ヒートデック)までの搬送を含めたEAP研修を実施することが大切です。