体重測定は、最も手軽に脱水レベルまたは、水分補給の状況を評価できる指標の1つです。

体の中にある水分量は、呼吸や排尿、排便、嘔吐、発汗などによる水分の損失と飲水や食事、代謝による水分の増加によって変化します。

ただ、体脂肪や筋肉は短期間で急激に変化するものではないため、1日や数日における体重の変化は基本的に体水分量の変動として捉えることができます。

今回は、脱水レベルまたは水分補給の状況を評価するために体重測定をする際の3つのタイミングについて解説します。

水分補給を把握するための体重測定のルール

体重測定の3つのタイミングについて解説する前に、共通する体重測定のルールを紹介します。一定のルールに基づいて体重測定をすることによって、測定した体重を比較することができ、どのように体重が変動しているかをより正確に把握することができ、より適切な水分補給の戦略を立てられます。

体重測定の7つのルール
  1. 精度の高い(50gごとの測定が可能)体重計を使用する
  2. 平らで固い場所に体重計を置いて測定する
  3. できる限り同じ場所、同じ時間帯に測定する
  4. 排尿後に測定する
  5. 全裸など、なるべく軽装な格好で測定する
  6. 汗をよく拭いてから測定する
  7. エクセルなどでデータ管理して活用しやすくする

ジンノウチ

体重測定の7つのルールについて1つずつ下記の記事で解説しています。

ぜひ読んでみてください。

体重測定のタイミング ① 起床時に体重を測定する

朝、起きたときに体重を測定することによって1日の単位での基準値として利用することができます。

起床時は、食事の影響がなく、睡眠によって数時間安静が保たれている状態なので、1日の中で体重の変動に最も影響が少なく体重を測定できるタイミングです。起床時には、体重を測定するだけではなく、「喉の渇き」と「おしっこの色」を加えた3つの指標を脱水のセルフチェックとして活用するようにしてください。

ジンノウチ

起床時に3つの指標を使って脱水のセルフチェックする方法を下記の記事で解説しています。もし、起床時に脱水のセルフチェックをしていない方はぜひ読んでみてください。

起床時の体重は前日の体重と比較して1%以内の範囲で変動するようにしましょう。ただ、個人差があるため、2%の範囲までを目安にした方がいい人もいるので、ご自身に合った目安であるようにしてください。

体重測定のタイミング ② 運動前後に体重を測定する

スポーツや運動中の水分補給が十分にできているかを評価する方法でよく採用されているのが、運動前後に体重を測定する方法です。

スポーツや運動をしているときの発汗量に対して、水分補給ができているのか、もしくはどれくらいできていないかを数値化することができます。

スポーツや運動前の体重とスポーツや運動後の体重を比較した体重の減少率を脱水率と言います。この脱水率は、2%以内にすることがスポーツや運動中の水分補給の目標です。

脱水率=(運動前の体重 – 運動後の体重)÷ 運動前の体重 x 100

脱水率が2%以上になると、持久性のパフォーマンスが低下すると言われています。

運動中の水分補給の量(飲水量)を数値化することで、運動中の水分補給率を計算することができます。

この水分補給率は、どれくらい運動中に水分補給ができていたかの達成率です。

水分補給率=飲水量 ÷ (運動前の体重 – 運動後の体重+飲水量)x 100

運動前の体重から運動後の体重を引いてから運動中に補給した飲水量を足すことによって総発汗量を算出することができます。

運動前後の体重測定で重要になる数字
  • 運動前の体重 – 運動後の体重
  • 脱水率
  • 総発汗量
  • 水分補給率

運動前の体重 – 運動後の体重に関しては、運動中の水分補給が足りていない量なので、運動後に水分補給する必要のある量になります。

そして、脱水率については、どれくらい熱中症のリスクがあったのか、パフォーマンス低下のリスクがあったのかを把握することができます。

また、この脱水率が3%もしくは5%以上の選手に関しては、次の練習や運動についてはどれくらい水分補給できているか必ず注目し、必要に応じて声掛けが必要になります。

総発汗量については、暑熱順化が達成した場合には同じ運動量であれば発汗量は増加するため、どれくらい暑熱順化ができているかの手がかりの1つになります。

水分補給率については、どれくらいパフォーマンスを発揮する上で選手が貢献できたかの数値になります。水分補給となると、どれくらい水分補給ができていないかに目が向きがちですが、水分補給は高いパフォーマンスを発揮するための取り組みであり、プラスの効果があると選手には考えてもらいたいので、水分補給率という指標を使っています。

ただし、注意しなければならないのは、100%を超えてしまうと、水中毒、別名低ナトリウム血症のリスクが増えるという点です。運動中に水分補給が多ければ多いほどいいという単純な問題ではありません。

体重測定のタイミング ③ 自宅を出発・帰宅時に体重を測定する

基本的に体重測定のタイミングは、起床時と運動前後の2つのタイミングです。

ただ、日本のスポーツ現場を考慮したり、スポーツや運動をしなかった日、スポーツや運動をしない人にとっては、あまり運動前後のタイミングで測定する場面がありません。

そこで、私が選手たちやクライアントさん、もしくは講演・セミナーでお伝えしているのが、自宅を出発する前と帰宅したタイミングでの体重を測定することです。

運動前後のタイミングと同じように、家を出てから帰宅するまでの時間にしっかりと水分補給ができているかを確認することができます。

また、部活動の帰宅中に熱中症で亡くなってしまったという死亡事故もありました。運動後の水分補給、特に大人の管理下ではない帰宅中の水分補給ができているかを数値化するためにも、この3つ目の体重測定のタイミングを追加しています。

体重を測定する3つのタイミングのまとめ

水分補給ができているかどうかを評価するために体重を測定します。

体重測定のタイミングは、「起床時」「運動前後」「自宅出発時・帰宅時」という3つのタイミングです。

前日との比較や運動前後、家を出る前と帰宅時の比較だけではなく、数日間、1週間などの期間で体重がどのように変動しているかを観察することも重要です。

特に、高齢者などあまり運動をしない方が自宅で熱中症になるような非労作性熱中症の場合には慢性的な脱水によって熱中症が引き起こされることがよく起こっています。